「それ、喜んでいいか微妙なんだけど…」
「ん?誉めことばだよ」
入学時第一印象は満場一致で“王子様”。
世の中にはこんな美形もいるのか…、と感心してしまった。
「まぁいいや。それ、なんも書いて無いけど出せんの?」
「う…。忘れてた」
英語の安藤先生は、テスト直しを一旦回収する。
2人が話している間も淡々と解説をしていたのだ。
時計を見れば、あと10分位で授業が終わってしまう時間。
慌ててペンを取りだそうとすると、思い出したように腕が痛んだ。
「…どうした?」
急に動きを止めた琴菜に不思議そうな顔を浮かべる。
「や、ちょっと…。私明日出すことにする」
「……86点。そっちは?」
「え?…79点」
「見ても平気だな…」
そう呟くと、琴菜の机から解答用紙を取り、赤ペンで解答を書き始めた。
「え?え…いいよ!そんな」
慌てて止めるが、手は止まることなくあっという間に返ってきた。見ると、ご丁寧にも琴菜の字を真似してある。
