「…しかたないですね」

琴菜が譲る気がないのを見てとると、ため息をついた。

「良いですか!?今日は右手使わないように。ノートを写すのも駄目です。守れないなら今すぐ病院に行きましょう」

「だ、大丈夫です!大人しくしてますから」

長野はその言葉に頷くと、治療を始めた。


「はい、終わりましたよ。くれぐれも安静にすること!」

「はい…。ありがとうございました。授業行って良いですか?」

綺麗に巻かれた包帯の上から袖をおろす。

「そうだな、今からなら3時間目に間に合うだろ」

「鞄は左手で持って下さいね」


頷き、言われたとおり鞄を持つ。

「ありがとうございました」


琴菜が部屋からいなくなると、一気に静かになった。



「授業、いいのか?」

長野が片付けながら聞く。

「あぁ、まぁ大丈夫だろ。3年だし自習で喜んでんじゃね?」


「テスト返さないと顰蹙かうよ。それより、やけに構うね」

「あ?何の事だ」

あくまでしらばっくれるつもりらしい。