いつの間にか菅野が細井の手をきつく掴んでいる。


「証拠も無いのに停学なんて。それと、手離したらどうですか?痛がってます」

細井が気圧されたように、手を離した。
その瞬間、一粒涙がこぼれ落ちる。

「それと、写真ってのは被写体と同じ場所にいないと撮れませんよ」

そう言うと、琴菜の肩を抱いて生徒指導室を出た。


「…坂本、大丈夫かぁ?」

さっきまでの威圧感は消え、ただ自分を気付かってくれる声。

「…平気です。ごめんなさい」

言うと同時にまた涙が溢れた。
最近泣いてばかりだ。

「なんで謝んだよ。ほら、保健室着いたぞ」


菅野の誘導で気付かないうちに保健室に来ていた。

「長野先生、患者!」

「菅野先生に坂本さん。どうしました?また貧血ですか?」

「いや、豚が悪い。ってなに坂本笑ってんだ!豚は豚だろ?」

思わず笑いがこぼれた。たしかに豚だが、生徒の前で教師が言っていいのだろうか?