「お前が坂本か…?」

細井がゆっくり言葉を発する。

「そうですけど…」

しかしまぁ、゛細い゛とは真逆の体型だ。生徒達も影では太井と呼んでいる。

「なんで呼ばれたかわかってるな?」

「いや、知らないですけど」

答えたのは後ろにいた菅野だった。

「菅野先生?なんであなたが…。もういいですよ」

「そういう訳にはいきません。話を戻して下さい」

きっぱり言うと、細井の前の椅子に琴菜を座るように促して自分も隣に座った。

細井の眉間に皺が更に増える。

「ハァ…。わかりました。坂本、お前バイトの届け出してるか?」
バイトは基本自由だが、学校に書類を提出して許可を貰わなければいけないことになっている。
しかし…

「?私バイトしてませんけど…」
「正直に言え!無断でバイトしてただろ?」

急に声を張り上げたかと思うと、直ぐに猫なで声に変わった。

「今なら反省文で済ませてやる」

「本当にしてません!」