「ほら、貧血だって先生も言ってたし!ちょっと頭が混乱してたってゆぅか…」
慌てて自転車を止め、後ろを向いた。
「馬鹿か!お前……」
次は手首捻る位じゃ済まないかもしれない。
と言おうとして、言葉に詰まった。
琴菜の目は真っ直ぐに自分に向けられている。
「ホントに、大丈夫だから!」
そのはっきりと拒絶を含んだ一言で、それ以上の追求は許されなかった。
前にもこんなことがあったな…。ふと思い出す。
幼なじみという関係にさえも壁を作り立ち入らせない。
一度決めたら頑固なのだ、彼女は。
「昨日は迷惑かけてごめん」
小さく続けられたが、かけるべき言葉が見つからず、黙ってまた自転車を走らせた。
ホントにわかっていない。
迷惑なんて一度も思ったことはないのだ。
むしろ自分が一番頼りにされている、と回りにたいして優越感もあったと思う。
しかし最近琴菜は1人で抱え込み、そして自分で後始末までする。少しは頼って欲しいというのは自分のエゴだろうか…?
いろいろ考えていたら、駐輪場に着いていた。
