『来なかったよ』
綺麗にハモる。さすが双子。
「夜勤があったみたい。電話来て、今日は帰って来るって」
菜月が補足した。
「ところで2人共、時間大丈夫なの?」
時計を見る。
「うわっ!ヤバい。琴菜行くぞ」
「え!?卵焼き……」
未練たっぷりの琴菜に菜月が2人分の弁当を渡した。
「行ってらっしゃい!」
その声に見送られて家を出る。
「琴菜、早く乗れ」
自転車のかごに鞄を入れ、琴菜の手がしっかり自分に回されているのを確認してこぎ出した。
「寒い~。だいちゃんマフラー忘れた!」
「馬鹿!って俺も忘れた…」
お互い馬鹿だね~。と琴菜が後ろで笑う。
その笑い声に、あまり詳しく聞かれたくないだろうが、昨日のことを聞いて見ようと口を開いた。
「琴菜、昨日……「だいちゃん、昨日ごめんね?」…おぅ」
「えっと、よく考えたら気のせいかも」
突き落とされたっていうの…。
段々語尾が小さくなって行く。
