長野が保健室に入ると、海示の方を向いて言った。
「海示、悪い。時間かかるから先に帰ってて」
「わかった。琴菜ちゃんにお大事にって言っておいて」
そう言うと海示は帰って行った。
康太も長野に付いていき、携帯で電話をかけた。
「あ、もしもし?母さん?琴菜今日連れて帰るから。…うん、なんか貧血だってよ。……そう夏香さんに連絡しといて欲しいって。………え?遅くなるんだ。わかった伝えとく。そっちもよろしく」
ピッ、と通話を切って溜め息をつく。
「どう?連絡取れた?」
「あ、ハイ。琴菜家に連れて帰ります。両親とも帰りが遅くなるみたいで…」
ふと顔を見ると、ポカンと口を開けていた。
なんなんだ?そんな変な発言をしただろうか…。
「2人とも……」
そこで言葉を止めてしまう。なにか言いにくいことなのだろうか。
そこまで考えて、不意に気付いた。
「別に付き合ってる訳じゃないですよ。家が向かいで、幼なじみなだけです」
苦笑が洩れた。
このことはよく勘違いされるのだ。
