僕の執事 完結編

「じゃなかったら、いつまでもおとなしくしてません…」


唇をちょっと尖らせそう言った葵を、さらにキツく抱きしめた。
その時、微かにいつかの香水の匂いがした。


『葵が素直だと変な感じ』


小さく笑い、体を離した。 息が掛かりそうなほど近い距離にいる葵は、恥ずかしいのかなかなか顔をあげてくれなくて、グイッと顎を持ち上げ、顔を覗くと恥ずかしそうに目だけを伏せた。


『かわいい…』


ゆっくり近づく唇が、葵に触れた瞬間ビクっとした。
軽く触れただけのキス。
葵とするのは2度目だ。
1度目は俺が風邪を引いた時、幼なじみの葵に戻ったからなんて理由付けて、葵の唇を奪った。


『…葵、好きだよ。』


そっと離れ、そう言葉を掛けると余韻に浸る隙も無く、半渇きの髪にドライヤーをあてた。
鏡越しに見える葵は、壁に寄りかかりしばらくジッとしてた。
頬の赤みが消えるのを待ってるらしい。
 ─シワ一つないシャツに袖を通すと、合っても意味のないネクタイを首にかけ、葵の元へ近寄った。


「…いかがなさいました?」


数秒間が開き、顔を上げた葵に、ネクタイをヒラつかせた。


「結べないんですか?」