『んー…よっぽど俺が好きらしい。』


真顔でそう言ったら、葵が隣で笑いを堪えた。
その姿を見て心の中で、ガッツポーズをした。


「みたいですね!」


『フッ それよりさ、服装自由って言われたから、後で選ぶの手伝って?』


「私でいいんですか?」


『うん、騎馬に選ばせたら、なんかとんでもない格好させられそうで…』


「分かりました。
後でお部屋に伺いますね!」


そんな会話を交わしながらリビングに入ると、母さんが誰かと話してた。


「すぐお食べになりますか?」


『あぁ、うん。…なあ、誰?』


「ご自分でお確かめください。」


さっきまで不機嫌だった騎馬の態度が一変、穏やかな笑顔に変わってた。
聞き覚えのあるその声の主の、後ろに立ち低い声で話しかけた。


『…なんでお前がいんだよ。』


「ん?」


笑顔で振り向いた恭平は、騎馬の焼いた卵焼きを手づかみで食べてた。


『ん? じゃなくて、なんでいんのか聞いてんの!』


「陸がお見合いするって言うから、わざわざ来てやったんだよ。」


『なんで?』


「なんでって見学?」


『…いただきます。』


隣に座り、並べられた朝食を無言で食べた。