-お見合い当日-
目覚めは最悪だった。
学校を休めるのも、今日は有り難くも何ともない。
朝、葵に起こされた時だけが、唯一幸せだった気がする…。
洗面台の鏡とにらめっこしながら、ゆっくり歯を磨いた。


「陸、少し急ぎめでお願いします。」


『…んー。』


後ろで目をつり上げ、鏡越しにそう言ってきた騎馬は、起きてからずっとこんな調子だった。
よっぽど見合い話が気に食わないらしい。


『はあ…さて、次は?』


歯磨きから髪のセットまでを済ませ、洗面台に手を付き騎馬に向き直った。


「朝食の後に、お好きな格好を。」


『服装は自由なんだ』


「はい、あまり堅苦しくしたくないと奥様が。
思い切り変な服装で行ってやればいいんです!」


急に笑顔になったと思ったら、どんだけぶち壊したいんだよ…
呆れて何も言えずにいると、チャイムが鳴った。


『誰かきたぞ?』


「誰ですか、こんな忙しい日に!?」


『その口調で出るなよ!』


「大丈夫です。 執事ですから!」


そこ関係あんの?
騎馬が出た後で、長いため息をつきながら洗面所を出た。


「騎馬さん、今日は不機嫌ですね…」