『ごめん、泣かせるつもりで言ったんじゃないんだけど…』


「でも、なんで今そんな話しするの?」


潤んだ瞳を隠すように俯いて、強く握られた拳に、涙が数滴落ちた。


『ごめん、自分勝手で…葵といるのに違う人の事考えてる自分が許せなくて…
本当は葵の隣に座って抱きしめたかったけど、葵を汚しそうで出来なかった。 ごめん…』


ため息とごめんしか出ない口を固く閉じ、目の前ですすり泣く葵からの言葉を、ただ待つしか出来なかった。
最悪と最低を何度繰り返しただろう?
何回ごめんって思っただろう? 今の俺にはどうすることも出来なくて、ただ観覧車が地上に戻るのを黙って見てた。


「ハァ…私も今陸以外の人の事を考えました。」


『えっ?』


急にそんな事を言われ、顔を上げた。
ワタシモイマ陸イガイノヒトノコトヲカンガエマシタ?


「これでおあいこです」


その瞬間、葵がそう言った瞬間、泣きそうになった。
最低な男だ…こんな事を言わせるために遊園地まで来たんじゃないのに、どうしていつも傷つけちゃうんだろう? どうしていつも泣かせるんだろ…