「あの、少し寄りたい所があるんですけど…」


葵がそう切り出したのは、ちょうど一ノ瀬家の前からから高城家へと移り変わる境目だった。


『別にいいけど。』


俺の返事を聞いた途端に、葵の顔が明るくなった。


「よかった…」


『で、どこ行くの?』


そう訊くと笑顔で秘密と返事が来た。
そして、しばらく公園で待ってて欲しいと言われた。


『…俺が一緒じゃダメなの?』


「ダメでは無いんですけど…」


俯いた葵が足を止めたのは、表札に【高城】と書かれた家の前だった。
 葵の言いにくそうな表情と、バックの家を重ねて見た時、何となく言いたいことが分かった気がした。


『なるほど…分かった。その代わり、なるべく“遅く”来いよ!?』


「え?」


笑顔で言った言葉に、戸惑う葵をその場に残し、1人公園に向かった───。