「カレンダーに向かってため息ばかり吐いてないで、葵さんを誘いに行ったらどうです? 相手も待ってるかも知れませんよ?」


呆れたと言わんばかりの口調で言われ、葵の部屋に来たはいいけど…ノック一つ出来ずにかれこれ20分、ここから動けずにいる。
何度も叩こうと手を上げてみたけど、あと一歩が踏み出せない…。


「なにしてるんですか?」


『えっ…?』


急にドアが開き驚く俺に、葵は驚きもせず淡々と言葉を発した。
まるで始めから俺が居るのに気づいたみたいな口振りだった。


「なにかご用があっていらしたんですよね?」


『まあ…』


「用件はなんですか?」


『…大した用じゃ無いんだけど、これからデートしない?』


「デート…?」


『なんか、ここ最近まともに話してくれないし、俺の事避けてるみたいだったから。 嫌なら無理にとは言わないけど。』


「…ご機嫌取りだったら、止めようと思ってたのに」


『え?』


ハッキリ聞こえた呟きを隠そうしてる葵を見て、俺は聞こえないフリをした。


「少し、お待ち頂けますか?」


『あ…うん』