僕の執事 完結編

そして、車が見えなくなるまで振り続けた葵は、俺が見ていたのを知っていたかのように、まっすぐに俺を見て思いっきり笑った。


『……!』


急に夢から目覚め戸惑った。夢と現実の区別もつかない程混乱する自分、を落ち着かせる為に深呼吸をした。


『ハァー…すげーリアル』


あの夢が現実だったらよかったのに。
ベッドから降り、部屋を出た。


『…さむっ…』


ヒンヤリした空気が素足に纏わりつく。
騎馬起きてるかな?てか今何時だ?
音を立てないよう歩いてる途中、ある部屋の前で足が止まった。


『……。』


ゆっくりとドアノブに手を伸ばすと、階段を上ってきた騎馬に出くわした。


「いかがなさいました?」


『…いや、別に。』


「葵さんなら、先ほど帰られましたよ?」


『起こしてくれればよかったのに。』


「僕は起こしましょうかって言ったんですが、葵さんが「疲れてるようだからそのまま寝かせてあげてください」と申されて。 それより、お夕食はいかがなさいましょう?」


『食欲はあるんだけど、食べる気力がなくて…悪いな。』


「そうですか。それは困りましたね…
では、コーヒーでもお淹れしましょうか?」


『うん、頼む。』


「かしこまりました。」


騎馬は軽く微笑むと、一階に降りていった。
完全に入るタイミング逃したな。
しばらくドアを見つめた後、騎馬に続いて一階に降りた。
─葵がいないこの家は、すごく静かで寒かった。
ホットコーヒーを飲んでるのに、ちっとも体が温まらない。


「今日は大人しいですね。」


あまりに何も喋らな過ぎる、俺を気にしてか、そんな事を言われた。


『なんか、話すのがめんどくさくて…』


「そうですか。」


結局、その夜交わした言葉は、寝る前のおやすみだけだになった。
こんなに喋らないのも久しぶりだな…
冷えた部屋の中、布団にくるまりそのまま眠りについた…───