僕の執事 完結編

『すごいうるさいんだけど、どうやったら治るかな? さっきからドキドキしっぱなしなんだよね…』


胸の奥で早くなる鼓動に、目を閉じ耳を傾ける葵は1つ息を吐いて「簡単ですよ。」と言った。


「陸が私を嫌いになれば、ドキドキは治まります。」


『それは…それは無理だ。』


笑い混じりに伝えると、笑顔で「知ってます。」と返された。


「陸の気持ち、言葉にしなくてもちゃんと届いてますよ?苦しくなるほどまっすぐに。
でも、時々今みたいに陸の気持ち聞かせてください。」


『うん。なあ、葵?』


「はい。」


『学校、遅刻しそうなんだけど。』


俺の言葉を聞いた葵は、俺を突き飛ばし騎馬に怒られると騒ぎ出した。
さっきまでの"2人の世界"が台無し。


『あとさ…』


「まだなにか?!」


『恭平とマリアさんを、2人だけで会わせるいい方法とかってないかな?』


「どうしてですか?」


『とりあえず、今説明してる時間ないから、帰ってからな?!』


「それは構いませんが、お忘れ物はないですか?」


『うん。』


カバンを肩に掛け、急かされながら玄関に向かった。
ギリギリだな。
靴を履き終えた所で、タイミング良く玄関が開き、騎馬が顔を出した。


『じゃあ、いってきます。』


「気をつけていってらっしゃいませ。」


足早に車に乗り込み、騎馬にギリギリだと告げた。


「問題ありません。
シートベルトは締めましたね?」


『うん。』


「では、参りましょうか。」


『あんま飛ばすなよ?』


「ちゃんと捕まっていてくださいね。」


目元で笑う騎馬がバックミラー越しに見え、とっさに取っ手を握った。