僕の執事 完結編

『行ってきます。』


「気をつけて、いってらっしゃい!」


珍しく母さんが玄関まで見送りに来た。
ニコニコ笑いながら手を振る母さんに、隣に居た葵が頭を下げ玄関の扉を開けた。


『はぁ…』


パタン─とドアが閉まる音と同時に、ため息がでた。


「大丈夫ですか?」


『俺は大丈夫だけど、お前は大丈夫なわけ?』


「私ですか?」


目を丸くし驚いた葵は、苦笑してた。


「今は大丈夫ですが、実際にお見合いの場に居たら、お相手の方に嫉妬してしまうかもしれませんね。」


『そっか…』


いつにも増して敬語で話す葵は、前のように感情を表に出さなくなった。
 ─到着した車のドアを珍しく葵が開けた。


『ありがと…』


葵は軽く微笑むと、ドアを閉めた。


「陸の人生、本に出来そうですね。」


『フフッ…かもな。
でも、読む奴ねぇだろ?』


騎馬の一言で、それまで張り詰めてた糸が一気に緩んだ。
車に揺られながら、灰色に染まる空を見上げた。
なんか、幸せ逃げそう…。