ぽかぽかと暖かい日差しが差し込んでいる。
他に雑音もなく、一番庭がきれいに見える縁側で横になっている。
頭の下にあるのは、誰かの膝で。時々香ってくる匂いがとても懐かしい。
その姿を見たくて目を開けようとするとそっと誰かの手が自分の目を覆う。
閉じている目をそっと覆うその手が、なぜか凄く愛おしい。
目を開いて、その手の主を見たいのに、その手が邪魔をする。
「・・・主は誰だ?」
そっと呟いた言葉に相手はクスクスと笑うだけで答えようとしない。
周りが気持ち良い状態であることが、よりなかなか答えない相手にそろそろイライラしてくる。
「・・・もう一度聞く。お前は誰だ」
先ほどよりも少しきつい口調になる。
すると笑い声がやみ少し機嫌を損ねたのか、すねたような口調が帰ってくる。
「私が分からないなんて…ひどいなあ」
その声はどこか、とても懐かしくて。愛おしくて。会いたくて。
「・・・・・・彩・・・ん」
「しーっ」
自然と動いた口をそっと目と指でふさがれる。
もどかしくて、起き上がろうとするが顔を押さえつけられ起き上がれない。
口をふさぐ手を掴み、口元を開放させると抗議する。
「ちょっと、手はなして」
「だーめ。」
何度か起き上がることを試すが、思いのほか彼女の力が強い。
どうにか彼女の姿を見たくて今だ目を覆う手をはなさせようと掴むが、びくともしない。
諦めきれなくて何度も試みるが、皮膚がくっついたように離れない。
「あはは、薫、ごめんね。この手は…はなしてあげられない」
「・・・彩音、彩音」
すがるように、口元を塞いだときの手を両手で握りしめる。
すると、小さく握り返してくれる。
もう、それだけで感情があふれだしてくる。
「彩音・・・彩音・・・逢いたい・・・彩音」
「薫・・・」
ふわっと香る匂いが少し強くなると同時に気配が近づく。
彼女は頭を下げて膝に頭を預けている薫の耳元へ唇を寄せる。
「大好き・・・大好きだよ・・・薫」
聞こえる声が近づいた。さらっと、彼女の髪が頬に触れる。
「ああ・・・。俺も・・・大好きだ。」
そっと手を離して彼女の近づいた頭を抱きしめる。
そっと目がうずくと閉じた瞳から涙が溢れる。
彼女の手が目を覆っていてくれてよかった。
「・・・泣き顔、見られなくていいけど・・・彩音の泣き顔見れないのが残念だよ」
「・・・ばか。」
苦笑する彼女の吐息が髪を揺らす。
目を覆う彼女の手に彼女から流れる涙が伝って顔が濡れていく。
「愛してる。愛してるよ、彩音。・・・いつまでも・・・誰よりも、君が一番だ」