何を言っても無駄なのだろう。
私はこっそりとため息をついて、外を眺めた。



「え?」



その人ごみの中で
一瞬
見知ったスーツ姿を見た気がした。
だけど、そのスーツ姿の男の人は女の人を連れていて
女の人は楽しそうに笑っていた。



「ゆき?」

「……。」

「ゆき?どうしたの??」

「ご、ごめん!!
私用事があったのを思い出した!!
みなみ、またね!!来週からは学校行くから!」



それだけ伝えると
私は急いでスーツ姿の男の人を探した。
お店を出て、スーツ姿の人が行ったほうに走った。

あれは、一成さん?

そう、スーツ姿の人は、一成さんに良く似ていて
私は不安になった。

“絶対騙されてる”

みなみの言葉が頭の中で反響していた。