夏の終わりに

「で、具体的に僕はどうすればいいんだい」

「逢ってくれればいいの。
今まで通りに。
さしあたっては今週の金曜日。
七時半に、いつものバーで」

「部屋は僕が予約するのかい」

「ええ」




夏を無理やりに引き延ばして
何になるのだろうかと、

クミは待ち合わせのホテルの
バーへ向かいながら自問した。


でもあの人に逢いたい。

あの人だけがぬくぬくと幸せなのが許せない。

あの人が好きだった。


日焼けして背丈があって精悍な風貌も、
自信に満ちた寛いだ態度も、

深みのある声も、
それからベッドの中で彼女にする様々なことごとも。