夏の終わりに

ホテルの入り口には灯が燈り始めていた。

金色の肩飾りをつけたドアボーイが、
ガラスドアを押し開けて迎い入れた。

夜には早いためなのか、
バーには人気(ひとけ)がなかった。

ひとつだけある観葉植物の陰に、
ダークグレーの背中が見えていた。

その背中が動いた。

くすんだような灰色の横顔が見えた。

輝くばかりに日焼けした精悍な風貌は、
どこにも残ってはいなかった。

園田は気後れしたように眼をしばたたかせて、
クミを見上げた。

彼女は無言で男の前に腰を下ろした。

それからもう一度、
無意識に貧乏ゆすりをしている園田を眺めた。


「日焼け、残っていないのね」