だが、いくら歩いてもその人は見つからなかった。
見つからなくてよかったのかもしれない。

『もう行くよ』
「えっ」
彼に私が声をかけたとき、空はもう明るくなっていた。
廃墟の隙間から光が差し込んでいる。
ホルマリンの瓶も反射してキラキラとしていた。
「どこ行ってたの?」
『ちょっと探険してただけよ』
彼は首を傾げたものの、すぐにカメラのチェックに戻った。