君の虚実に恋してる



「猫って…わ、わたしのこと嫌いだったんですか?」

「うん。大嫌い」

かっつ先輩が微笑みながら言った。
そんな恋人を見つめるようなうっとりとした顔のまま氷のような声を出さないで。
めまいがした。
頭を鈍器で殴られたような気がする。
じわーっと目頭に涙が溜まって、乾いた目が痛かった。
でもまばたきをしたら涙がこぼれてしまう。


「そうやって丸わかりなのに、泣いてないふりしようとするところとか」

「瑛史のことが好きなところとか」

「俺を怖がったりするところとか」




そう言って、かっつ先輩はわたしを抱きしめた。

…え?


「好きだよ」


…ええ?


「嫌いって…」

さっき大嫌いって言われたけど。

「嘘」

嘘…?

引き寄せられるままに先輩の胸へダイブした。いつの間にかこぼれだした涙がシャツに滲んだ。


混乱した頭で、部室の中の部長にこのやりとりを知られていたらどうしようと思った。


「やっぱ嫌い」


その言葉が合図のように、わたしは金縛りにあったように動けなくなってしまった。

わたしが動かないでいると先輩はわたしの髪を撫でた。
そのまま手が下って耳に触れられて、顎のラインをなぞられて、キスされた。