一年間で沢山の人と出会い、別れた。
癌の痛みと戦いながらも、だんなさんと最後に思い出を作った佐々木さん。消えていく過去に怯えながらも笑顔を忘れなかった豊田さん。頑固で短期だけど、大切な物をくれた倉持さん。東京で頑張る私を認めてくれた父。東京で五年間、私を支えてくれたウメばあさん。雑貨屋で変わらず働く麻耶と立派な料理人を目指している遥。そして私の大切な人になった優雨。みんな私の中に刻まれた、本当に出会えて良かったと思える人達だ。
今、ウメばあさんの家の前を通る。住人を失った家は静まり返っているが、庭の満開の桜が塀の上から見える。ウメばあさん、今年も綺麗に咲いたよ。今年はだんなさんと2人で見れたかな? 私、忘れないから。
私はしばらく自転車を漕ぎ、ある一軒の家の前で止まった。
ドアの前に立ち、深呼吸する。新しいお客さんはいつも緊張する。よし、大丈夫。おじいちゃん、おばあちゃん私、頑張ってるから見ててね。
ドアを開ける。次はどんな出会いが待ってるだろう。
「こんにちは~!ヘルパーの宮川です!」