私は初めて優雨の家に通された。確かにあの場所から近い高層マンションの一室が彼の家だった。
「まぁ適当に座って」
黒と白を基調にされた部屋は綺麗に整理されていた。ベランダからは夜の綺麗な夜景が望める。
私は青いソファーに腰を降ろす。優雨はその間に飲み物を用意してくれた。
「私、そんなに前の彼女さんに似てるの?」
優雨は困ったように頭を掻き、
「似てる。実は最初沙紀に話かけたのもその婚約者に似てたからなんだ」
「そうなんだ!」
私はあの日を思い出した。達也に別れを告げられ、泣きながら雨に濡れていた私に傘を貸してくれた優雨。そこから半年後にやっとお互いの気持ちが繋がった。
「最初の内はすごい似てたから、確かに沙紀と前の彼女を重ねて見てたこともあった。でも会うたびに沙紀が気になっていって…この連絡無かった一ヶ月半、何回泣いたか分からないよ」
優雨は笑顔で私に語る。
「そうだったんだ…私、嬉しいよ!」
私は純粋に嬉しかった。幸せを感じた。
「でも…さ…」
優雨が急に顔を曇らせる。
「どうしたの?」
優雨は決断したように顔を上げた。
「実はオレ、来年アメリカに行くんだ」
「え…」
私はすぐに反応できなかった。
「沙紀の介護にかける話を聞いてたらオレも今の仕事をもうちょっと本気でやらなきゃな…と思って。アメリカに行って色々学んで来ることを決めたんだ。だから沙紀を悲しませたくなかったから、好きってこと、伝える気は無かったんだけど…」
私は少し間を置いて笑顔で言った。
「頑張ってきなよ!私、いつまでも待ってるから!」
優雨の目に涙が溢れた。
「沙紀…オレ幸せだよ!多分2、3年になるけど…」
「私待つよ。優雨のこといつまでも待ってる!」
優雨は涙で濡れた顔をクシャッと笑顔にする。私もまた涙が溢れてきた。
「じゃあ約束ね!」
優雨が小指を出す。私はその指に自分の指を絡めた。涙のゆびきりは少ししょっぱくて、嬉しかった。