無事にイサミとのケンカは終わり、俺は孤児院に帰ってきた。

まだ夏の余韻が残るこの季節、まだまだ外は明るいのだが、時間は7時を回ろうとしていた。

簡単な夕食を食った後、俺は自室にこもり、先生に渡されたプリントを開始したんだ。

勉強を開始して気づいたんだが、担任の先生は俺の為に、教科書の範囲をプリントに書き込んでくれていて、簡単に回答できるようにしてくれていた。

そのおかげか、俺の勉強のペースは思っていた以上にはかどり、二時間もすれば、プリントの内容を理解する事に成功した。

勉強も、理解が出来ればそんなに苦ではない…歴史の暗記や、英単語の暗記は苦労しそうだが、自分一人でやみくもに勉強していた時に比べれば、そんなにしんどくはなかった。

苦労するのは…やはりサヨの病気についてだ。

カズヤからは、定期的に連絡でサヨの状態については連絡がくるんだが…どうやら、あまりよろしくない状況らしい。

俺と一悶着があった日から、病室から出るのを嫌がっているようなのだ。

当事者の俺としては、とても責任を感じるところだ。

だが、今の俺には何も出来ない…やらなくちゃいけない事は、今の俺に出来る責任を果たす事だ。

サヨの話し相手には柏木先生がなってくれる。サヨの心配はカズヤがしてくれる…なら俺は記憶の鍵を探そう…。

あの日の事を思い出す事で…。