だがそんな意思疎通は、俺達の中でだけしか成立していなく、サヨは本気で心配していたりする。

「大丈夫だってサヨ!ヒサジは身体が丈夫だから、落ちても問題ないんだよ。それにこの前も、このブランコで一周してたしな…」

カズヤは笑いながら冗談を、サヨに言い聞かせる。

「…ホント?」

「あぁ!本当だ!」

お兄ちゃんが大好きなサヨは、カズヤの言う事を簡単に真に受ける…。そして、カズヤは嘘の情報を本当だと断言する。

「そんな事出来る訳ないだろ!サヨ?これは、嘘だからな?」

サヨにそんなビックリ人間みたいなイメージを持たれたら大いに困る…。俺は、必死にサヨに弁明をした。

「…嘘なの?でもお兄ちゃんは、本当だって…」

「だ・か・ら!カズヤが嘘をついているんだって…」

俺が必死にサヨに言い聞かせ、カズヤはその様子を見て笑いだす。サヨはサヨで不思議そうな表情で俺の言葉に耳を傾けていた…。





そんな毎日がいつまでも続くと思っていたあの頃…過去を振り返ると楽しい思いでばかり。

すっかりブランコの揺れが小さくなり、足を着くと簡単に動きが止まった。俺は、ブランコから降りる事なく、そのまま考えにふけっていると、院長先生が俺を呼ぶ声が聞こえてきた…。

「ヒサジ、ちょっと来てくれるかい?」

孤児院の窓から顔を出し、俺を手招きしていた…。

「うん…今行くよ。」

俺は、院長先生の元に行くと、居間のテーブルに座るように言われ、何気なく座る。院長先生もテーブルに座ると、ある封筒をテーブルの上に置いた。

これは、銀二さんが俺に駅で渡してきた封筒だ。中身は確認していないが、確か大事な書類が入っているとかいってたっけな…。

院長先生は、俺が席に着いた事を確認すると、おもむろに口を開いた…。

「九月から、ヒサジは中学校に行くんだ…良いね?」

「…えっ?」