「どの面って…この面だよ」

ミツハルはそう言うと、ハヤトの両頬を掴み、軽く引っ張る。

「………死にたいのか?」

ハヤトはと言うと、無抵抗で頬を引張られながらも、目と言葉で抵抗をしていた。

「そんなカッカしないでよ。別に痛くないでしょ?」

「まぁな…激しくバカにされている気はするがな」

ミツハルはそう言いながら手を放し、ハヤトは不機嫌そうな表情でミツハルを見下ろしている。

「ハヤトは精一杯、自分の出来る事をしただけでしょ?何も負い目を感じる事なんかないじゃないか」

ミツハルはそう言ってハヤトに話しかけるが、言われている本人は全く納得している様子はなく、釈然としない表情で深いため息を吐く。

そして、ハヤトは静かに自分の思いを語りだした。

「別に俺は、今日のケンカに負い目を感じている訳ではないさ。ただ俺が今、サヨちゃんの目の前に現れる事がサヨちゃんにとってストレスになるんじゃないかと思っているだけだよ…現代社会に生きている女の子にとって、俺の存在は恐怖以外の何者でもないはずだからな」

ハヤトはそう言うと、車の助手席のドアを開け、静かに乗り込みだした。

そんなハヤトの様子を見たミツハルは、一瞬少し寂しそうな表情をしながらも、意気揚揚と車に乗り込み、車のエンジンをかけた…。

そして、二人を乗せた車は、少しの時間を置いて、病院の駐車場から姿を消した…。