孤児院に帰ってきた俺は、俺が小さい頃遊び場として使っていた、中庭に行った。

中庭には、簡易的ではあるが、小さい子供が使うには十分なブランコがあり、俺はそのブランコに腰を下ろす。

ここから見る景色は俺の思い出の一つだ…。最初は勢いをつけながら乗り、飛び出さない程度に勢いがついたら、後は遠心力にまかせ、ブランコ特有の揺れに身をまかせる。

昔に比べると、身長も伸び、目に映る景色は少しは変わったが、それでも懐かしさは変わる事はない。俺は、何気なくブランコに乗りながら、昔の記憶を辿った…。







「あぶねってカズヤ!これ以上はマジで落ちる!」

「鎖をしっかり持ってたらそんな簡単には落ちねぇよ!もしかしてビビってんのか?」

「そんなんじゃないって!」

俺がまだ小学生の高学年の頃。カズヤは中学生の二年生ぐらいだったかな…。

学校が休みの日は、こうやって中庭でカズヤと遊んでいたんだ。俺がブランコに乗り、カズヤが目一杯の力で漕ぐ…俺はそのたびに、生死をさまよう様な体験をしたっけな…。

「…お兄ちゃん、ホントに危ないよ?それにヒサが可哀そう…」

サヨはそんな俺達を見て、冷静に兄に注意をし、俺の心配をしてくれた。

俺もカズヤも遊びで言っているのであって、マジでは言ってない。カズヤも何だかんだで手加減しているだろうし、俺も垂直にでもならない限りは、落ちない自信があった。