満足感…充実感…そのどれもが、俺の体を支配していた。

そんな時だ…。

「これは…」

この場に、一人の男が駆けつけたのはな…。

すっかり忘れていた…どうしよう。

カズヤは自分の目の前に起きているこの現状が理解出来ないようだ。

俺は顔を腫らせながら血を流し、サヨを抱きしめているこの状況…いま駆け付けたカズヤには到底理解出来ない状況だろう。

「カズヤ…これはだな…」

カズヤにはちゃんと説明しないといけないのだが…この状況をどこから説明すれば良いのやら。

軽く動揺している俺だったが、俺よりも先に俺の腕に包まれている、サヨが行動を起こした。

視線をカズヤに向けると、軽く笑顔を浮かべ、言葉を口にする…。

「…お兄ちゃん」

サヨの言葉に、カズヤの表情が一気に固まる。それはもう、信じられない物を見ている様な表情でな…。

そんな中俺は、サヨを抱きしめていた腕を解き、サヨを自由にさせる。

俺は十分幸せを噛み締めた。

今度はカズヤが、眼の前で起きているこの現実を噛み締める番だ。

サヨは俺の体から離れると、ゆっくりとカズヤに近づいて行く…。

カズヤはそんなサヨを唖然としながら見つめ…そして。

「サヨ…」

眼の前に来たサヨを、カズヤが抱き締めた…。