サヨの病院を離れた俺は、一人病院を後にした。カズヤはというと、仕事まで時間があるらしく、まだ病院に残るらしい。

俺も、カズヤが帰るまで、病院に残れば良かったのだが、俺は先に帰る事にした。今日の目的は達したから…。

そして解った…サヨは俺の事を『忘れて』いるだけで、『知らない』訳ではないのだと言う事を…。

確かにサヨが俺の事を覚えていないのは少し寂しいが、何時までも凹んでいる訳にはいかない。

サヨの記憶のパズルを解く。俺は、その鍵を探さないといけない…。

切り替えるのだ…。俺は、サヨを取り戻す為にこの現実世界に帰ってきたのだから。

俺は、まだ日が下がっていない晴天の中、孤児院に向かって歩いた。

季節はまだまだ夏真っ盛りであり、気温は相変わらず熱い…。でも、ジャッジタウンの気温に比べれば些か涼しく感じると俺は感じた。

周りの風景を見て改めて俺は思う…此処は、現実の世界なのだと。

スーツを着込んだ大人が居て、学生服を着た子供が居るこの世界。ジャッジタウンでは見られないこの風景が俺には不自然に見えて仕方がない…。

たった一年半の間、ジャッジタウンに居ただけなのに、俺の中の常識は大きく変わっていた。