「ヒサジ!!大変だ!」

俺がケイタに会ってちょうど一週間が経ったある日。

孤児院でくつろいでいた俺に、電話がかかってきた。電話の相手はカズヤで、とても焦っている様子で、俺に電話してきた。

「どうしたんだカズヤ…何かあったのか?」

「あぁ。サヨが病院から居なくなったんだ!何所にもいないんだよ…」

カズヤは落ち着いていられない様子で、俺に話してきた…。激しく動揺し、今も走りながら電話をしているのか、息も絶え絶えで俺に説明をしている。

「そうか…俺も探しに行くよ。何か解ったらすぐに連絡する」

「済まないなヒサジ…よろしく頼む」

俺はカズヤとの電話を切ると、出かける準備を始めた。腕や足の関節の柔軟体操を丁寧にし、動きやすい服装に着替える。

そして、孤児院を出ると、ある場所に向かった。

実はサヨの居場所を俺は知っていた…。

俺が向かったのは、あの忌まわしい出来事があった廃ビルだ。そしてそこに、サヨを誘拐した張本人も居る…。

俺は、廃ビルに入ると、あの場所に向かう。サヨが倒れ、カズヤが死にかけ、俺も生死を彷徨ったあの忌々しい場所…。

そしてそこに、サヨは居るのだ。

俺が到着すると、その場所にはサヨと二人の男が居た。

一人は、俺と同じぐらいの背格好をした、割と奇麗な顔立ちをしている男。少し切れ長の眼は、相手に絶望感を与える事が出来る冷徹な眼をしている…。

もう一人の男は、小柄な体型をしている男で、サングラスをしている為か、人相までは解らない…。