「あっ、そういえばそういう本、こっちの本棚にありますけど」
「あらほんと。ありがと。抜田君」
そういいながら背伸びをして色々と本を眺めている。
 最悪な事態にその本棚の下にゆきみが隠れているのだ。とはいっても、ここの本棚は出っ張りが激しく、下に隠れると影になりやすいので隠れるには最適だ。
 そして、僕はまたしても下にしゃがみこんでいるゆきみのパンツをチェックするのだった。結局、僕もゆきみと同じなのかもしれない。恋愛感情までいかないが、一人の女の下着を毎日みているということは、かなり近い存在じゃないと出来ないことなのだが。
ゆきみが僕のことをどういう存在だと思っているかは・・・
今日の放課後聞こう。
「あった、あった~。この本よ。じゃ、またね」
まるで教師とは思えないほど手軽な口調に、ただ呆然と立ち尽くす僕はまたヒールの音をきくのだった。
 ゆきみが立ち上がると
「一体、サボるってどうするの?」
 急に巻き戻しされたみたいに最初の頃話していた話題につり込まれた。
「うん。あの・・・ゲーセンとかさ」
「あっ、そう。あたしケアベアのぬいぐるみほしいからさ、とってちょうだい」
したけ「えー、ま、いいや。カレカノにみられたら嫌だけどー」
「またえらそうな口ききやがってぇー」
 こういう友情的な関わり方が一番良いと思っていた。
でも、二人の気が抜けた時、突然パズルの違うピースをあてはめられてしまったように、距離は縮まる。
だけど、僕はそれが起こるという事自体がこわいから、普通に、普通に、出来るだけ距離を縮ませないように、離れさせないように・・・その難しい中間地点の調整が僕にはとてつもなく苦難になっているのだった。