牙を剥き出しにした大きな口に飲み込まれる寸前、ドルメックは身を翻し〔Gスネーク〕の身体にナイフで切りつける。

ナイフはジャリジャリと嫌な音をたてて表皮を滑った。

「…くっ!…」


硬い鱗に覆われた身体は、刃を受け付けないらしい。

刃物が通用しないということは、ドルメックに勝ち目は無い。


何故なら、ドルメックが持っている装備は、盗賊の仕事で使う物が殆どだからだ。

照明弾、催涙弾、煙幕、爆竹、催眠香、ワイヤー等…。

殺傷力の有る物は持ち合わせていない。


唯一持っているのがナイフの類い。
それが無効となると、打つ手は無い。


手持ちの装備では、巨大な爬虫類相手に効果があるとは思えなかった。


とりあえずは間合いを取って次の手を考えようと、跳びすさる。

それを察知した〔Gスネーク〕が、尾を鞭のようにしならせてドルメックに追撃を仕掛けた。

ちょうど、巨大な身体に尾が巻き付くような形になる。



交差した腕で迫る尾を受け止め、その反動で跳躍するつもりだった。

しかし、予想外に動きが早く、跳び退く間も無く尾に巻き付かれてしまった。


「!っしまっ…」


獲物を捕まえた〔Gスネーク〕は、シューシューと空気の抜けるような音を出しながらドルメックを覗き込む。

妙に冷たい鱗の肌が、獲物を弄ぶようにじわじわと締め上げる。


「…ぐっぅ…!」


圧迫感に息が詰まる。
骨がミシミシと悲鳴を上げていた。