突然の外敵に怯えた葦毛が嘶く。
その鳴き声に、〔Gスネーク〕が葦毛の居るほうに向き直った。
(…っ!しまった!)
葦毛は近くの木に繋いである。
このままでは逃げられない。
それを見越してか、〔Gスネーク〕は標的を完全にそちらに決めたようだ。
ドルメックは舌打ちし、投げナイフを二本投じた。
一本は葦毛を繋ぐ結び目に突き刺さる。
興奮して暴れていたのも手伝い、戒めが千切れた。
葦毛は自由の身となり、その場から走り去った。
そしてもう一本は〔Gスネーク〕の眼球に向けて。
こちらも見事命中し、ナイフが突き刺さった痛みにその巨体をのたうち回らせた。
(よしっ!上手くいった…。
後は、俺がどうやってコイツから逃げるか…だな)
〔Gスネーク〕は、自分を傷付けた相手――ドルメックを認識する。
興奮状態で鎌首をもたげ、牙を剥き出し威嚇してきた。
向き合った左目には、まだナイフが突き刺さったままだ。
赤紫色の体液が鈍く光る鱗の肌を伝う。
左右の手に持つナイフを、しっかりと握り直した。
暫くそのまま睨み合っていたが、〔Gスネーク〕が不意に突っ込んできた。
ドルメックを丸呑み出来る程大きく開いた口が肉薄する。

