パチッ…ガラッ…。


ハッと、ドルメックは現実に引き戻された。

目の前の焚き火から火の粉が弾け、くべた木が崩れた。


一度辺りの気配を探り、深く溜息を吐き出す。

不覚にも思考の海に溺れ、周囲への注意を怠ってしまっていた。
これでは何の為に夜間起きているのかわからない。


(気を付けないとなぁ…)

ドルメックはとりあえず、余り考え事をしないように武器の手入れでもしてみることにした。


粗方武器の手入れが終わった頃、不意に辺りの気配が変わった。

今まで聞こえていたはずの、虫の鳴き声がパタリと止んだ。



息を殺し、手入れしたばかりのナイフをベルトから外し構える。

左手にも投げナイフを出しておくことにした。


野性の獣は火を怖がる。
つまり、今近くまで迫ってきているのは、獣の類ではないということだ。


耳を澄ますと、ズリズリと引き摺るような異様な音が聞こえる。

どうにも嫌な予感がした。


音は段々近付いて来ている。
音と気配から、かなり大物のようだ。



前方の茂みがガサガサと揺れる。

その陰から勢い良く飛び出してきたのは、鋭い牙と二股に別れた舌を剥き出した大きな口。


噛み付かれる寸前。
右手のナイフで上顎、左手の投げナイフを握り直し、下顎の牙をそれぞれ受け止める。



焚き火に照らされた身体は網目模様の鱗に覆われて鈍く光っている。
胴体はドルメックと対して変わらない。

全長4、5メートルはありそうな巨大な蛇。



最近頻繁に出現するようになった異常変異種。
〔G(ジャイアント)スネーク〕だ。