これで、残る疑問は一つ。


【宝玉の民】にドラゴン討伐の召集が掛かった理由。


「これは、ダンナにとっては良い情報でもあり、悪い情報でもあります…。

心して聞いて下さいねぇ?」



盗賊[D]が【宝玉の民】であるという噂は王都にも届いていた。

そこで、各地に居る情報屋を通して、盗賊[D]と思われる者へドラゴン討伐の召集を呼び掛けたらしい。



その内容とは、

《滅びたはずの【宝玉の民】の末裔に、ドラゴン討伐部隊への参加を要請する。

討伐部隊への参加を受けるのであれば、王族の所有している[民の雫]を返還し、その敬意に応えるつもりである》



かつて、【宝玉の民】が滅ぼされ[民の雫]を奪われた際、その半数以上が王族に献上されたらしい。

その美しい宝石で王族に取り入ろうとする者が数多いたということだ。



「これが、ダンナにとって良い情報ですねぇ〜。

王都へ行けば、仲間の核石の約半数が戻ってくるってことですから…」



確かに、ドルメックにとってかなり有益ではある。

場所が分かっていても、王城に盗みに入るなど一盗賊に出来る訳が無い。

向こうから進んで渡してくれるなら、それにこしたことは無いというものだ。



「俺にとって悪い情報っていうのは?」



トールは罰が悪そうに話し出した。


「…[民の雫]を返すのには、ちゃんと意味があるんです。

王都のお偉いさん方は、[民の雫]の価値をしっかり理解していらっしゃる。

【宝玉の民】に戦わせる為に、お仲間の核石を与えようって話ですよぉ」



ドルメックは言っている意味を理解して、怒りに身体を震わせた。