翌朝、遂にパンパスの旅立ちの時が来た。


空には雲一つなく、草原の草々は風に揺れ、眩く煌めいていた。


まさしく門出に相応しい日だった。





集落の外れまで見送りに来たのは、長老とパンパスの母親だけだった。


パンパスの母親は、ドラゴンが王国に飛来し、草原を蹂躙するようになってから、いつかこの日が来ることを分かっていた。


父親の力を色濃く引き継ぐ息子…。


寂しがらぬように、後を追わぬようにと伏せて来た父親の行方。


しかし、それもまた虚しく、駆り立てるのは、またその血だった。


パンパスの母親に出来ることは、今や、二人の安全を祈ることだけだった。




















二人の間に会話はなかった。


それは、二人とも多くを語らない性格だったから。


父親の力を色濃く受け継いだパンパスも、心ばかりは母親のそれを引き継いでいた。





そして、





「行ってきます。」





その一言で、パンパスは旅立った。