雨はさらに強くなってくる。

雪になりかけの、個体と液体が混じったような雨だった。

ここら辺にはバス停はないから、急いで探さないと。


私は持っていたカバンを傘代わりに、公園を飛び出した。

飛び出した先に運良くタクシーが走ってくるところだったので、手を降って止まってもらう。

黄色の車体のが私の手間で止まり、自動でドアが開いたのですぐさま中に飛び込んだ。


「いやあ、酷い雨ですねえ」


私が乗るや否や、運転手さんが声をかけてきた。

白髪の混じった黒髪がやけに鮮やかで、声は男性にしてはやや高かった。

私はええ、と返事を返しながら濡れた髪を手でとかした。


「あの…」

「あ、行き先は言わなくてもいいですよ」

「え?」


運転手さんは行き先を聞かずに車を発進させてしまった。

わけがわからない私は運転手さんに問うしかない。


「そこ、見てごらんなさい」


そこ、というのがどこを指すのか始めはわからなかったが、車内を見渡してみるとわかった。

私の目の前、助手席の背もたれの裏側に貼り紙がしてあって、手書きで何やら書いてあった。


「きぼう…タクシー?」