アナタハシニマシタ２

教師は複雑そうな顔をしていたが、クラスメートは気付かずすぐに沙良の所に行く。沙良はその様子をはっきり感じ取った。彼はこの前、勇に頼んで警察に連行された少年少女たちのクラスの担任だ。それを思い出した彼は少しつらい顔をしたのだろう。



沙良はクラスメートたちの喜びの輪に入らずそのまま自分の席に戻る。今、彼らはどうしているのだろうか。学校に姿を現さないのだから良くて停学中かもしれない。



「ちょっと静かにしてよ！」



一人の女子生徒の激昂で沙良は我に返った。怒鳴った女子生徒はクラスメイトの輪の前で立っている。



「落ちつけよ。松本。おまえはよく頑張ってる。でも周りに当たるのは良くないぞ」



教師が松本と呼ばれる女子生徒をなだめる。



松本は黒い髪をツインテールにして、度のきつそうな眼鏡をしている。外したら美人のようにも思えるが、厳しい顔がそれを帳消ししている。松本はそれでも癇癪が収まる様子もなく、




「先生。そう言って心の底では私のこと笑ってるんじゃなくて？『前回の期末まで岸野さんに学年トップを守られ続けて、彼女が家出だか失踪でいなくなった穴は見事に川崎さんに埋められた。』なんて思ってるんじゃありませんの？」



「松本。おまえが頑張っているのは良く分かる。でもたまには他人を認めてやる気持ちの余裕や、自分を褒める余裕をもて。それがお前には……」



「私はそんな話をしているんじゃありません！結果です！結果を残せなければゼロと同じです！」



それだけ言うと彼女は自分の席に戻ってムスッとした顔をしていた。完全に教師はどうしたらいいか分からなくなっている。



「先生……。テスト返してください……」



男子生徒の小声で教師は自分のやるべきことを思い出した。