アナタハシニマシタ2

「今回のクラス最高は、学年トップだぞ。今までは六組の岸野が独占だったが、良かったな。クラストップは胸張って冬休みに入れるな。逆に最低点を取ったやつは冬休みたっぷり勉強だからな」



そう言って教師が黒板に今回のテストの最高点と最低点。そして平均点を書いていく。最高点はもちろん満点。それを見たときにほとんどの生徒が沙良のところを見ていた。今までの出来だともしかしたら取れると思われているらしい。沙良は恥ずかしくなって顔を下げた。



「先生!そのクラストップは意外な奴ですか?」



誰かが教師に質問する。遠まわしに沙良のことを聞いているようなものだが、教師にはその意図は分からないだろう。しかし教師は綻んだ顔で話す。



「そうだな。俺も教師やっててあまり例を見ないなあ。成績が悪い奴をぜひ見習わせたいとつくづく思った」



教師の言うことでクラスメートは一層満点を取ったのは沙良だと確信しているようでざわつく。それを教師が軽く注意する。



「ほらほら、自分が取った思ってるんじゃないか?そうじゃなかった奴はきっちり反省するんだぞ。じゃあ一番から取りに来い」



そう言ってテストの受け取りが始める。皆一様に一喜一憂していく。



「次、十番川崎沙良。――良く頑張った。今回のクラストップだ」



そう言って手渡されたのは、満点の解答用紙。周囲の予想通りクラストップは沙良であった。



「ほらやっぱ沙良だ!すごいじゃん!これで沙良学年トップ確定じゃない!?」



周りの反応を見て教師も話に入ってくる。



「何だ、川崎は他の科目でもすごいのか?期末までは火の車だったのにな。ついにやる気になったのか?」


まるで自分のことのように嬉しがるクラスメートが、沙良の経緯を話すと。



「……ああ、なるほどな。それで勉強できるようになったのか。なら一発屋で終わらせるなよ?」