「あ、明日学校だから泊まるのは無理だけど…話は聞く。まだ時間早いし」
「そーか、今日まだ木曜か…。学校行かねーと、曜日の感覚狂う」
くしゃっと髪を持ち上げ、ベッドにごろんとする。
「俺さ、捨てられたんだよね」
「…は?」
いきなり話に入ったらしく、若干戸惑う。
だけど、龍斗の言葉はしっかり耳に入ってきた。
「ちょ…どういう意味?」
「俺ん家、昔離婚しててさ。母親と兄貴と3人暮らしだったんだよ」
どこか遠く、けれど一点を見つめて淡々と喋る。
そんな龍斗は寂しそうで。
胸が締め付けられる。
「俺が中2で兄貴が高2の時、アイツ新しい旦那見付けてきてさ。『彼が新しいお父さん』って紹介してきた次の日、どっか行ったまんま帰ってこなかった」
「……」
「で、それっきり。置き手紙もなんもない。金だけ置いてその"旦那"とどっか行ったんだよな」
「ひどい…」
だって自分が産んだ子供だよ?
なんで置いて出て行けるの?
あたしには考えられない。
