「今日はいろいろとありがとう、神山くん」
神山くんに借りたピンクのヘルメットを返す。
「…あぁ」
「じゃあ、おやすみなさい」
「…あぁ」
神山くんに背を向け、玄関のドアを開く。
「…蜜姫!」
「…?」
家に入ろうとした瞬間、神山くんがあたしを呼んだ。
「…龍斗でいい」
「へ?」
「神山くんじゃなくて、龍斗でいい」
「…あ、うん」
「それだけだ。早く寝ろよ」
そういうと、バイクは走り出した。
「…龍斗くん、か」
なんかいい響きだな。
「おやすみなさい、龍斗くん」
あたしはそっと呟き、家に入った。
「蜜姫!あんたこんな時間まで何してたの!」
…お母さんに怒られたのは言うまでもない。
