「なんだよ。」

「いや、羽ついてるのに、飛ばなくて自転車なんだと思って(笑)」

「うるせー。まだ使えないんだよ。大人になるまでは。」

「大人って何歳からなの?」
「研修が終わったら。」

「研修??」

「地上に降りて、三年間。」
「ふーん。。なんかよくわかんないけど。」

「じゃー聞くなよ。」
そう言って、自転車に乗って帰りだした。

「じゃ私も帰るか。。」

駐輪場を出たその時だった。

キーーーーー!!!!

バイクが飛び出して来て、私はバイクと接触してしまった。


「い、いったーい。。」
その場に倒れこんだ。すごい勢いでぶつかったが、手も足も動く。

バルン!バルン!ブーン。。。。。。。

「あたた、、。うそー!逃げられた!」

私の膝小僧からはダラダラと血が出ていた。

「おい!大丈夫か?」

顔をあげると、そこには遠藤春がいた。

なぜかわからないけれど、涙が出てきた。

「いたいよぉー!」

「おい。泣くなって。いいから後ろに乗れ。」

「え?」

「え?じゃなくて。病院行くぞ。」

私は遠藤春の自転車の後ろに乗った。

「おい。」

「な、なに。」

「ちゃんとつかまれ。」

だ、だって、男の子と自転車で二人乗りなんてした事ないんだもん。。

「ほら行くぞ。」
そういって私の腕をぐっと引っ張り私は、遠藤春の背中に腕を回した。

なんだか、不思議な感じがした。羽のフワッとした感触と背中の暖かさを感じて、ドキドキした。

自転車に乗っている間、私たちは無言だった。
でも、なぜか心地いい時間だった。


診察室から出てくると、遠藤春は待っていてくれた。
私は軽い打撲と擦り傷だけだった。

「ありがとう。」
帰りに自転車の後ろでささやいた。
聞こえたのか聞こえていないのかわからないけど。