あまり人に対して腹を立てることも少ない俺だが、今回は流石に……、
大人げないとは思いつつも、怒りがおさまらない。



「あのさ、どうして俺に対してそんなに冷たいわけ?」

初日である今日が無事に終わろうとしている頃、俺は部屋に戻ってきたばかり彼女に問いつめた。
さっきあんな態度から、こっちも自然と口調が尖ってしまうのは仕方ないのかもしれない。

「気に入らないのよ」

「??」

会ったばかりなのに俺の一体何が気にくわないっていうんだよ。
つき合いが長いならまだしも……。
これは俺にも反論するべき余地はたくさんある。

「私は戦死した兄さんの仇を取るためにここに来た……」

「戦死?」

俺たちの任務は国を守るため、闘うことにある。

「本当に闘いたいって思っているの?その覚悟はあるの?」

……覚悟。
それは『死ぬ』覚悟があるのかいうこと。

「……」

「あなたを見ているとそうは思えないのよ。初日から遅刻するなんて気が緩んでいる証拠だわ」

ようやく彼女が俺のことをそういう人間だと判断していた理由が掴めた。

「確かに遅刻していたのは悪いけどさ、別に……」

そんな目くじら立てて怒ることでもなかろうに――と言いかけた俺の言葉を遮って彼女は続けた。

「『キサラギ』はシルバープラネットの中でも唯一誇れる特効部隊。私たちは何れ『ダーク』に乗って他の惑星の敵と戦わなければならないの」

『ダーク』とは『キサラギ』が所有する戦闘タイプのロボットのことである。

「そんなことは分かってるよ」

「じゃあ……私たちの命は常に『生』と『死』の狭間にあるってことも?」

『キサラギ』一員として生きていく意味……か。
正直、そんな細かいことまでごちゃごちゃと考えたことねぇけど、これだけは言える。

「闘いには絶対負けられねぇ!!俺たちは死ぬために来たんじゃない、『生きる』ためにここに来たんだからな!!」

彼女はきょとんした顔で俺を見つめ、

「……そうね」

と小さく呟いた。