『ここでは男も女もない。我々は遊びでやっているわけじゃないんだ。常に命を賭けていることを忘れるな!分かったな!』

……と言われてもなぁ。
あの『鬼教官』め。


──A156。


この部屋か……。

俺は足を止め、大きく深呼吸をした。
何故、そうしたのか理由は自分で分かっているつもりだった。


コンコン。


ノックしてすぐ扉が開く。近代社会はありがちの『自動ドア』ってやつだ。

「なんだ……誰もいないのか」

少しだけ緊張していた自分が滑稽に思えてくるほどだ。

部屋の中には、背中合わせに置かれた二つの机と二段ベットが一つ。
非常に殺風景である。

どうやら彼女は先にこの部屋に来ていたようだ。
床には荷物が入っているだろう、大きなバックが無造作に置かれている。

「ったくもっと隅に置けっての」

明らかに足の踏み場を邪魔する位置にそれはあった。
仕方なく少し動かすと、自分の荷物は壁際に置いた。


……ウィーン。


自動ドアが開き一人の少女が現れた。

「あ、あの……」

「あなたがルームメイト?」

同じ歳くらいだよな?
クリーム色のロングヘアーと薄いブルーの瞳がすごく印象的だ。

「ニール=ブランク、よろしく。仲良くやろうぜ」

「私は誰とも仲良くする気はないわ、だから気安く話しかけないで」

なっ、なんなんだ……この女!

彼女はそう吐き捨て颯爽と部屋を出て行ってしまった。