このしきたりとも言えるルールに逆らうまでの勇気は俺にはなかった。
それだけであの少年はすごいと思う。


「どうしたの?難しい顔して」

「死ぬことよりも貫く信念って相当な覚悟がいるって思ってさ」

「覚悟……か。そうかもね」

「ソニアは死ぬのが怖いと思うか?」

「怖くないって思ってた。つい最近まではね」

彼女はそう言うと遠い目をしていた。
まるで何かを思い出すかのように……。

「つい最近?」

「そっ。私がここに入りたかったのは前にも言ったように、兄の仇を討つため。目的が達成できればいつ死んでもいいって思ってた」

ソニアはいつもの強気な彼女ではなかった。

「兄貴はグランディス(シルバープラネットを襲う敵集団)に殺されたのか?」

「うん……」

俺はそれ以上は聞くのを止め、彼女の方から言葉を発するのを待った。

「戦場で闘う者にとっては当たり前の出来事かもしれない。でもやっぱり悲しいよ。人が死ぬのは……例えそれが誰であってもね」

「……俺でも?」

「たぶん──ね」

「そっか、そっか。それじゃまだ死ねないな」

「?」

俺は両手を軽く伸ばして後ろに組んだ。

「自分が死んだ時、ソニアに涙くらいは流してもらえるようにならないと」

「……」

「今、俺たちのやるべきことは闘うことだ。そしてグランディスからこの惑星を守ること、それがお前の兄貴の仇を討つことにもなるんだ」

「ニール……」

彼女の優しく微笑むその姿は、何だか俺の心に強く残っていた。