「ああ~面倒くせぇ」

両腕を頭の後ろに組みながら、少年は呟いた。

ココでは男女問わず十六歳から二十歳までは軍隊(『フロンティア』と呼ぶ)で過ごさなければならない、という非常に厄介な規則があったりする。

当然、決まりに反する者は許されない。
もしもそんな勇気があるヤツが居たら、お目にかかりたいものである。

規則を破ったらどうなるのかって?
相当重い『罪』になるらしいが……、あいにく俺はまだその内容を知らない。

「まぁ、そう言うな。ニール」

俺もまだフロンティアに来て一年、威張れるような立場では決してないのだ。
因みに俺とディラはここに入る前からの顔なじみ。
世間的な言い方をすれば一つ年上の『幼なじみ』ってとこだな。

「ディラはいいよなぁ。なんと言ってもあの『キサラギ』の一員なんだから」

『キサラギ』というのば、フロンティア唯一の戦闘チームで、そこに入れるか入れないかでは、今後の将来に大きく影響を及ぼす……らしい。
もちろん俺はまだ下っ端、『ぺーぺー』(見習い)だ。

「お前だって今日のトライアウト受けるんだろ?受かれば一緒さ」

「気楽に言ってくれるぜ……ったく」

トライアウト受かるのだって簡単じゃないんだぞぅ!!
これだから優等生は……。
そうそう、ディラは去年の受験者の中で一位通過したんだよな、確か。

トライアウトは入隊して一年経てば受けることができる。
ただし攻撃力、防御力、体力、知力、精神力の五項目全て、
『B判定』以上であることが条件だが。

「さっきちょっと様子見てきたけど女が一人居たな」

「……?」

ここにも女性はいるが大抵は雑用をしている。
居たんだな、トライアウト受ける女が……。

「最悪落ちたとしても、女には負けんなよ」

「あったりめーだ」

「『キサラギ』で待ってるぜ」

オイ、プレッシャーかけるなよ……。


『グループFでトライアウトを受ける方は射撃場前に集合して下さい』
場内のアナウンスが俺を呼んでいた。