失恋を予感していたこの時期に、昔の大恋愛映画の主人公がつけていそうな、銀河河鉄道999のメーテル風の、クラシックでロマンチックなデザインの、黒のファー付きの手袋を、半信半疑で身近に一つ置いてみた。
結果は失恋。
クリスマスイヴなのにメール一つ無く放っとかれて、その日は自分も遅くまで仕事だった。
それで、上司が紹介してくれたBARに初めて一人で行った。
BARで、イヴに一人ぼっちの女、25歳を過ぎた自分。
物欲しげで、惨めで、プライドが疼いた。
それでもその日は、どうしても一人で居たくなかったのだ。
それだけだったら最悪のイヴだったに違いない。
もうこの店には来ない、と決めた翌日の、クリスマスの朝、ふとあの手袋を店に忘れたことに気が付いた。
しぶしぶ手袋を取りに行き、ついでに飲んでいたら、今の婚約者の女上司に出会い、気に入られ、彼を紹介され、年明けに付き合うことになり、2009年10月にお互いの両親が話し合い、正式に婚約した。

これは作者の実話だ。

サンタクロースは幼稚園で信じなくなった、ネガティブで、カナシイ恋愛体質のわたしが、そんなクリスマスファンタジーに出会えたのは、乙女風に飾り付けた自分の部屋と、黒の手袋という、恋の舞台装置のお陰だったのだ。