「七瀬先輩のこと…気になってたのは本当ですよ。好きになったのは、俺にとっては計算外でしたけど。本気で奪いとりたかったな…。」


ちょっとだけ、いつものような優しい笑顔を見せると、振り返ることなく沖依君は教室を出ていってしまった。


静かな空気が流れる中、外はポツポツと雨が降り始める。



ど……どうしよう。
二人になっちゃったけど、なんだか気まずい…。





「翠央……。」


ちょっと低い声で呼ばれて、体が強張る。



やっぱり匠先輩…怒ってるよね?