「おう。お前も起きたか?」

「……誰?」

「…俺は」

「シオンだよ」

ついさっき全く同じ質問を答えたので、少し面倒くさがりながら答えようとしたら、何故か先に答えられてしまった。

「おい。何故お前が答える」

シオンはふて腐れながらそう言った。子供相手に大人気ないかもしれないが、そこは敢えて突っ込まないようにしてほしい。

「とにかく、お前ら、名前は?」

シオンが仁王立ちしながら聞くと、二人の少年はお互いに顔を見合わせた後、ほぼ同時に首を傾けた。

「…僕知らない」

「……僕も」

「そうか……て、は!?自分の名前だぞ!?」

シオンはもう一度聞くが、二人はさっきと同じ反応をしただけだった。

「……じゃあ、何で雪山なんかで二人一緒に倒れてたんだ?」

とりあえず、質問を変えてみたが、二人はまたまた同じ反応。

「雪山?二人で?……覚えてないけど…」

「僕も」

「はぁ!?」

どうやら、厄介なものを家に引き込んでしまったらしい。

まぁ
最初から分かっていても見捨てることは出来ないだろうけど…

「もしかして記憶喪失かよ…?」

しかも重度の。

「はぁ…」

この先不安だらけだったけど、これが全ての始まりだった。

それに気づくことが出来なかった俺をどうか、許してくれ……。